中国 ・ クレジット ・ 金融政策2026.07.17

輸出は+27%、融資は減速 中国経済の3か月

同じ工場から出た車が、外では+69.6%売れ、内では-16.1%。3か月続く「外は加速、内は収縮」はどちらが先に折れるのか。7月末の政治局会議・8月の貿易統計・7月分TSFで、その答えは確かめられます。

輸出は+27%、融資は減速 中国経済の3か月
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ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。(鴨長明『方丈記』より)

同じ「中国経済」という川でも、この3か月で流れている水は入れ替わりつつあります。外へ向かう水は勢いを増し、内側を巡る水は細くなりました。今日はその入れ替わりを、単月の数字ではなく4月から6月までの3か月を並べて確かめます。

今日のトピック

まず輸出です。中国の輸出額は前年同月比で4月に+14.1%、5月に+19.4%、6月には+27%まで加速しました[1]。6月の貿易黒字は1,256億ドルと、前月の1,054億ドルからさらに積み上がっています[1]。牽引役ははっきりしていて、金額ベースで半導体の輸出は6月に前年比+121.9%、自動車は+69.6%。対EU輸出は5月の+7.6%から6月は+18.5%へ跳ねました。なかでもエアコンは、記録的な猛暑に見舞われた欧州向けに6月単月で+72.8%と突出しています[1]

一方、国内に目を移すと逆向きの動きが出てきます。銀行融資や債券発行を合算した社会融資総量(TSF)の伸び率は、4月+7.8%、5月+7.7%、6月+7.4%と一段ずつ低下しました[2]。4月には人民元建て新規融資が単月でマイナスに転じています。2025年7月以来、約9か月ぶりの出来事です[2]。固定資産投資は6月までの年初来で前年比-5.7%、うち不動産投資は-18%まで縮小幅を広げました[3]。結果として4〜6月期のGDP成長率は前年比+4.3%と、政府の年間目標レンジとされる4.5〜5%を下回っています[3]

この二つの動きが、同じ経済の中で3か月間ずっと逆を向いてきました。これが今回の主題です。一つ象徴的な対比を挙げると、6月の自動車輸出は金額ベースで前年比+69.6%だったのに対し[1]、国内の自動車類の小売額は-16.1%でした(同じく金額ベース)[3]。同じ工場から出た車が、外では売れて、内では売れていないのです。単月なら統計のぶれで片づけられますが、3か月続くと、単なる誤差では説明しきれません。

強気派は何を見ているか

この構図を前向きにとらえる立場は、輸出の中身の変化に注目します。かつての労働集約型の輸出ではなく、いま伸びているのは半導体・EV・AI関連という付加価値の高い品目です。税関統計の発表後、海外のエコノミストからは、6月の貿易額の急伸は主にAIブームを背景にした半導体価格の上昇を映したものだという分析や、輸出製造業の強さが内需の弱さを補っているという指摘が出ています[4]。統計の発表前から、輸出は構造問題を解決しているのではなく時間を買っているのだ、という整理を示した海外エコノミストの寄稿もありました[4]

政策の面でも、手詰まりではなく選択の段階だという見方ができます。李強首相は7月13日に専門家や企業家を集めた経済シンポジウムを開き、反循環的な調節の強化と、追加政策の事前検討・備えを指示したと新華社が伝えています[5]。例年どおりなら7月末には経済をテーマにした政治局会議が開かれます(昨年は7月30日でした)。目標レンジを下回るGDPという明確な材料が出た以上、何らかの追加支援が打たれるとの期待には根拠があります。

弱気派はなぜ懐疑的なのか

慎重な立場が注目するのは、融資の細り方が景気循環というより構造に見える点です。上半期を通してみると家計向け融資は残高が減少し(特に短期)、6月の新規融資も市場予想を下回りました[2]。中国人民銀行(PBoC)の総裁は6月の金融フォーラムで、融資の「減速と質の向上」が新常態になりうると述べており[2]、これは、借りて投資するという従来の成長様式が戻らない可能性を、当局が織り込み始めた言葉とも受け取れます。

金融政策の反応も抑制的です。PBoCの鄒瀾副総裁は7月15日の会見で、預金準備率の引き下げを「長期の資金供給に重点を置く手段」として豊富な道具箱の一つに挙げるに留め、早期の実行には踏み込みませんでした。その一方で、対象を絞った構造的ツールの活用には繰り返し言及しています[6]。大規模な刺激を待つ向きには肩透かしが続いています。さらに、外需頼みの構図そのものの持続性にも疑問符がつきます。月1,000億ドルを超える貿易黒字は、対米・対EUの通商摩擦を再燃させる材料になりやすいからです。

私の意見

市場の関心は「7月末の政治局会議で大型の追加刺激が出るか」に集まっているようです。私はここで、大型刺激への期待に対しては分が悪いとみています。理由は言葉の選び方、正確には言葉の並べ方にあります。李強首相のシンポジウムでの指示は、既存政策を使い切ることが先に置かれ、追加政策は「事前の検討・備え」という段階の表現でした[5]。PBoCも緩和の手段を並べてみせながら実行は急がず、対象を絞ったツールへの言及を重ねています[6]。3か月分の発言と行動を並べる限り、当局は内需の穴を財政・金融の総力で埋めにいくのではなく、輸出が稼いだ時間の中で的を絞った支援を小刻みに出す運びを選んでいます。そう見るのが素直だと考えます。

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