2026.07.28

原油は落ちたのに、利上げ観測だけが残った|FOMC前夜

原油は100ドル超えから一時87ドル台へ急反落。それでも市場は「利上げ」への賭けを降りていません。木曜午前3時の結果発表の前に、この織り込みが何の値付けなのかを整理しました。

原油は落ちたのに、利上げ観測だけが残った|FOMC前夜
Photo by Joshua Woroniecki on Unsplash

連邦準備制度は、パーティーがまさに盛り上がってきたところで、パンチボウルを片付けさせるお目付け役の立場にある。(FRB議長ウィリアム・マクチェズニー・マーティンが1955年の講演で引いた言葉)

中央銀行の役割を語るとき、70年余りたったいまも引かれる言葉です[16]。宴が熱いうちに酒を下げる、それが利上げ。ところが今週のFedは逆の間合いに立たされています。宴のもとになった原油は勝手に冷え始めたのに、市場は「酒が下げられる」ほうへの賭けを降りていません。今日はこのねじれが何の値付けなのかを、木曜未明の結果発表の前に確かめます。

今日のトピック

米連邦公開市場委員会(FOMC)が米国時間の28日と29日に開かれ、結果は日本時間30日木曜の午前3時に出ます[1]。エコノミストの本線は据え置きです。FactSetの調査では政策金利3.50〜3.75%の維持が大勢で、実現すれば5会合連続になります[2]

金利先物の市場は、別の値付けをしてきました。先物から算出される7月利上げの確率は、この半月余りで大きく波打っています。No.010を書いた7月10日時点では35%前後、13日には4割台後半に触れる場面もありました[3]。それが15日にはいったん10.7%まで縮みます。22日には34.7%へと1週間で3倍を超え[3]、24日の報道では38%に達しました[2]。膨らみ直した燃料は原油です。ブレント原油は23日に1バレル100ドルを超え、エネルギー発のインフレ再燃が意識されました[2]

その前提が週明けに崩れます。米国とイランの攻撃の応酬は、27日時点で3夜連続止まっています。トランプ大統領が交渉に「余地」を与えているのだ、と米国のウォルツ国連大使は説明しています[4]。ブレントは27日に約8%下げて一時87ドル台。23日の100ドル超からは2営業日でおよそ13%の下げで、それでも1か月前と比べればなお2割高い水準です[5]。では利上げの織り込みはどうなったか。27日の実測は、集計と取得時点により31.5%から37.6%[6]。24日の38%と比べて返したのは最大でも6ポイント余りで、10.7%から膨らんだおよそ27ポイントの大半は消えていません。

利上げありとみる側の見え方

この値付けの背景には、インフレはもう原油だけの話ではないという見方があります。値動きの荒いエネルギーと食品を除いたコアPCE物価は、5月分で前年比3.4%と2023年10月以来の高さでした。半導体やメモリーなどAI関連品目の値上がりが効いているとの指摘もあります[3]。原油が下がっても、残りの火は消えていないという理屈です。6月の経済見通しでは、金利の点を出した18人のうち9人が年内の利上げを見込みました。8人が据え置き、1人が利下げです[7]

Fedの中の声も、具体的になってきました。ダラス連銀のローガン総裁は「インフレは高い水準にあまりに長くとどまり、軌道に戻る様子がない」と述べました。クリーブランド連銀のハマック総裁も「物価を抑える行動が必要だという企業の声を、就任以来初めて聞いている」と明かしています。いずれも直接的な言葉です。市場関係者の間では、今回この2人が利上げを主張して反対票を投じるとの予想が出ています[8]。ウォーシュFRB議長自身、こうした割れを「よい家族げんか」と呼んでいます[8]。米系大手の一つは、7月こそ据え置きでも9月・10月・12月と3回の利上げを予想します[9]。実際、CME FedWatchの集計では、9月の会合までに1回以上の利上げが起きる確率は8割前後に達しています(7月27日時点)[10]

据え置きとみる側の見え方

一方の据え置き予想には、議長自身の枠組みという裏付けがあります。ウォーシュ議長は就任以来、供給要因の物価上昇を金利で追いかけない考えを示してきました[9]。9月からの利上げを予想するこの大手でさえ、7月は据え置きとみています。理由は「利上げを見送ればインフレ対応への信認が揺らぎ、利上げすれば自らの枠組みに反する」という板挟みです[9]。割れが表面化する前の6月、投票は12対0の全会一致でした[12]。原油が87ドル台へ戻ったことは、供給ショックだからこそ利上げが要るという利上げ派の説明の前提を弱めます。

もっと先を見る予測もあります。別の米系大手は、雇用の強さは続かないとみて、年内の利下げ再開を予想してきました。強めの雇用統計が出るたびに各社が利下げ予想を取り下げるなか、6月時点の報道では、この大手が残った数少ない利下げ派と伝えられていました[11]。つまり市場の値付けと、当局者の発言と、金融機関の予想の間で、幅どころか方向そのものが割れています。

私の意見

手がかりは27日の値動きにあると考えています。原油が約8%下げた日も、膨らんだ織り込みの4分の3以上がそのまま残りました。この数字はもう原油の値段だけを映す鏡ではなくなっています。値付けされているのは「Fedはインフレを我慢できるのか」という信認への保険料に近い、と私はみています。

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