日本 ・ 金融政策 ・ 為替2026.06.30

最高値から28%安となった金は終わりの始まりか押し目か

日銀は政策金利を1.0%へ。それでも円安は続く。この「ねじれ」を強気・弱気の両論で整理します。

最高値から28%安となった金は終わりの始まりか押し目か
Photo by Takashi Miyazaki on Unsplash

「金には、たいした使い道もなければ、何かを生み出す力もない。」ウォーレン・バフェットが2011年度のバークシャー・ハサウェイ株主への手紙(2012年公表)に記した一節です。当時金は史上最高値圏にありました。

あの手紙から14年が経ちました。金はさらに買われ、一時は当時の3倍に達しました。そこから大きく値を崩しています。バフェット氏が「使い道もなければ何も生まない」と切り捨てた資産です。そこにこれだけの人とお金が振り回され続けている。それはそれで面白いところです。


今日のトピック

$3,959。6月24日にドル建てスポット金が日中に付けた安値です。この日金は2025年11月以来はじめて$4,000を割り込みました。以後$4,000前後で値を探る展開が続いています(7月2日時点で約$4,050/oz)[1]。半年前の1月28〜29日には史上最高値・約$5,590/ozをつけていましたが、そこから現値ベースで約28%まで水準を切り下げたことになります。6月の安値ベースなら約29%です[1][2][3]

第2四半期(4〜6月)だけで見ても下落率は約16%で、2013年第2四半期以来・約13年ぶりの下げ幅にあたります。2024年以降ではじめての四半期マイナスにもなりました[4]。半年前まで「止まらない上昇」と語られていた資産がこれほどの速さで水準を切り下げました。その落差が注目されます。

この下げは長い上昇相場のなかの一調整なのか。それとも潮目そのものの変化なのか。同じ数字が立場によって正反対に解釈できる局面です。

6月単月の下落率は約-11〜12%(集計により差)で、2008年終盤以来の月間最大下落にあたります。四半期(-16%)と単月(-11〜12%)は計測期間が同じではありません。報道の数字を読む際は取り違えに注意が必要です[5]。直近の史上最高値は2026年1月28〜29日です。金額そのものは出所により$5,586〜$5,597と幅があります。約$5,590/ozが通常の参照値です。1月28日は史上最大級の1日ドル上昇幅を記録したと報じられています[2]。この1月急騰の主因は米イラン情勢ではありません。ドル指数が4年ぶり安値へ急落したことによる「代替資産」としての需要でした[9]。その後ドルが反転して高くなった流れが今回の下落の一因になります。

円建て(税込小売)で見ると景色は少し違います。7月2日時点で¥23,423/gと、1月29日のピーク¥29,815/g(田中貴金属)から約-21%の水準です。ドル建て(約-28%)より下落率が小さいのは円安が緩衝しているからにほかなりません[7]。ただ為替の綱引き次第でこの緩衝は逆回転します。円高に振れれば体感の下げはドル建てに近づきます。

「放棄」ではなく「ペース調整」という見方

世界金評議会の集計では2026年第1四半期の中央銀行ネット購入は244トンで、前四半期・5年平均をいずれも上回りました。中銀は月次でばらつきがあっても連続して純購入を続けています。方向そのものは変わっていないといいます[15]

世界の外貨準備に占めるドルの比率は1999年の約71%から2024年には約58%へ長期で低下してきました(IMF集計)。制裁リスクを避ける動きもあり、新興国を中心に準備を金へ分散する流れは続くと米系運用大手はみています[16]。ある国では準備・輸入の積み増しが加速したデータもあり、その狙いを準備通貨の多様化と解釈する米系大手銀の分析もあります[17]

景気悪化・地政学ショック・利下げ期待の強まりが重なれば金は$4,500付近へ。世界金評議会は年央見通しでそう示しています。条件次第では$5,000も視野に入るとのことです。米系運用大手も金融政策のハト派化とドル安が重なれば実質利回りの低下が追い風になり得ると指摘します[18]

長期で強気に見る根拠もあります。米系大手銀は中銀需要・脱ドル・新規鉱山供給の不足を挙げています[19]。世界の政府債務が総債務の記録的な約30%に達するなか、通貨価値の希薄化に対するヘッジとしての金需要も下支えになるといいます[20]。実際に6月下旬には金ETFへ4月以来最大の週間資金流入があり、押し目買いの存在もうかがえます[22]

「強さを売る」番になったという声

ドル指数は6月22日に100.58と2025年5月以来の高値をつけ、翌6月24日には101.6付近までさらに上昇しました[10]。6月のFOMCでは2026年の政策金利見通し(中央値)が3.4%から3.8%へ引き上げられました。利下げバイアスが利上げバイアスへ反転した形です[10]。市場が織り込む9月の利上げ確率は執筆時点で約65〜70%とされます(集計ツールで差があります)。7月2日発表の米雇用統計で大きく振れる局面でした[8]

無利回りの金が見ているのは名目金利ではありません。反応するのは実質利回りで、その上昇は保有の機会費用を高める方向に働きます[24]。加えて6月17日に署名された米イランの暫定枠組みで原油が急落し、安全資産としての金の妙味が相殺されたと報じられています[11]

第2四半期の金ETFは4週連続で流出しました。6月には約76億ドルの資金が抜けています[12]。中央銀行の買いも月次では過去12か月平均を下回る局面があり、勢いの一服が意識されます。第1四半期には一部の中銀で売却報道もありました。これが「幅広い中銀売り」への懸念を呼びました[13]

欧州系運用会社のコモディティ責任者は上昇を維持できないこと自体が脆いセンチメントの表れだと述べたと報じられています。トレーダーは弱さを買うのではなく強さを売っている。過去数年から顕著な変化だという指摘です[14]。下値の目安として世界金評議会の年央見通しは調整シナリオで基準値から-5〜-15%(約$3,500〜3,900)のレンジを置いています[23]

強気にも弱気にもそれぞれ裏付けとなる数字があります。まだどちらの物語も崩れてはいません。

私の意見

$4,000という節目は崩壊ラインというより綱引きの場という見方があります。米系ストラテジストはこの水準を主要な攻防ラインと位置づけ、買い手と売り手が拮抗しているとみています[21]。世界金評議会の年央見通しも下期を基準値(約$4,100)に対して-15%〜+20%のレンジで描いています。内訳は中立なら±5%・調整シナリオなら約$3,500〜3,900・上振れなら$4,500〜5,000程度です[23]。強気も弱気も出発点はほぼ同じ$4,000近辺です。

続きは、私の意見と数字です。

メールアドレスだけで読めます。費用はかかりません。

営業メールは送りません。いつでも解除できます。