2026.07.22

停戦が終わった週末、金は買われなかった|原油91ドルの見方

戦火が広がったのに、金は買われませんでした。市場はこの戦争を物価と金利の問題として値付けています。原油高と円安がはじめて同じ側に立つ、第2波の話です。

停戦が終わった週末、金は買われなかった|原油91ドルの見方
Photo by Adem Percem on Unsplash

石油の一滴は、血の一滴に値する。(ジョルジュ・クレマンソー・第一次大戦中の言葉として伝わる)

百年前の首相の言葉を毎週の相場解説で思い出す日が来るとは思いませんでした。先週末、米国とイランの停戦は事実上終わりました。原油は週明けに一時91ドル台へ乗りました。ところが同じ週、教科書なら買われるはずの金が4,000ドル近辺まで押されたままです。今日はこのねじれから原油の第2波が日本に何を運んでくるかを確かめます。

今日のトピック

順番に並べます。米国とイランは6月17日に停戦の覚書(イスラマバード覚書)に署名しました。最長60日での最終合意を目指す枠組みでした[1]。それが先週崩れたのです。7月17日、ヨルダンの米空軍基地が攻撃されて米兵2名が死亡しました[2]。イランによる商船攻撃も合わせ、米国務長官は覚書が事実上葬られたと認めています[1]。応酬はそれ以前から続いています。米軍によるイラン軍事拠点への攻撃は7月20日までに9夜連続に達しました[3]

海の上では封鎖が広がっています。フーシ派は7月20日、サウジアラビアの港湾に寄港する船舶に警告を出しました[4]。サウジ原油を積んで中国やインドへ向かうタンカーが航路を変え始めたと報じられています[5]

値段はこう動きました。ブレント原油は先週1週間で約16%上がって4月以来の大きさの週間上昇となりました[6]。7月21日には一時91ドル台でした[7]。米国のガソリン全国平均は週明けに4ドルを超えました。7月20日は4.00ドル・21日は4.02ドルです[8]。金利も動いています。英国の10年国債利回りは新政権の財政運営への警戒を主因に5%を超えました。原油高への懸念も重なっています[9]

そして日本です。サウジは5月時点で日本の原油輸入の3割弱を占めています。封鎖が続けばその調達に影響が出る恐れがあると報じられています[10]

供給途絶を重くみる側の見え方

数字を重ねると心配する側の理屈が見えます。日本の原油の中東依存度はおよそ95%です。UAEとサウジの2か国がその中心です[11]

サウジは紅海側のヤンブー港へ輸出を振り替えられます。ただし6月のヤンブー輸出はすでに過去最大の日量419万バレルに達しており、積み増しの余地は限られると報じられています[10]。喜望峰まわりの迂回(うかい)は航海日数と輸送コストを大きく増やします[10]

為替が追い打ちをかけるのが今回の特徴です。円は6月末に一時1ドル=162円台と、1986年12月以来の安値を付けました[12]。6月の企業物価は前年比7.1%で3年3か月ぶりの伸びです。石油・石炭製品は22.8%の上昇でした[13]

No.004を書いた7月初めと違い、今回は原油高と円安が同時に進んでいます。ガソリン店頭価格の全国平均は7月13日時点で169.9円と前週からほぼ横ばいでした。まだ第2波を織り込んでいません[14]

原油からガソリンへは数週間から1か月のラグがあります。電気・ガスへは半年から10か月というのが定型の届き方です。

実害は限られるとみる側の見え方

一方で慌てない側にも根拠があります。日本の石油備蓄は2月時点で243日分ありました。3月にはIEA加盟国の協調放出に参加して取り崩しを始めており4月末で210日分です[15]

政府は春から代替ルートの確保を進めてきました。ホルムズ海峡を回避するUAEフジャイラ港経由・北米からの調達など複数の選択肢を用意しています[16]

ガソリンには1リットルあたり7.5円の補助が入ります。7月から9月の電気・ガス代には合計5,000円規模の支援が決まっています[17]。価格の急変を家計が生で受ける構造ではありません。

外交の糸も切れていません。カタール・エジプト・パキスタンなどの仲介国が10日間の停戦案を米・イラン双方に提示しています。どちらもまだ受け入れていませんが、テーブルは残っています[1]

私の意見

いちばんの手がかりは金の値動きだと考えています。中東の戦火がこれだけ広がっているのに、金はほとんど買われません。約4,000ドルまで押されて戻れずにいます。市場はこの戦争を逃げ出す理由ではなく、物価と金利の問題として値付けている。私はそうみています。

続きは、私の意見と数字です。

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