利回りは価格の裏返し、上昇は利上げ予想か財政リスクか
債券の価格と利回りはシーソーの関係にあります。では、いまの超長期金利の上昇は「利上げ予想」なのか「財政リスクの上乗せ」なのか。国債という世界で一番大きな借金の値段の見方を、金利が財布に届く経路まで確かめます。
「作用があれば、そこには常に、大きさの等しい反作用がある。」1687年、アイザック・ニュートンが『プリンキピア』に記した運動の第三法則の一節です。
りんごも国債も、押せば必ず何かが返ってくるという点では、同じ理屈に従っています。ただし国債の世界で押しているのは指ではなく値段で、押し返してくるのは利回りという名前の数字です。7月のはじめ、日本の国債市場でその「反作用」が、一段とはっきり表れました。
2026年7月2日、日本の10年国債入札は表面利率が年2.7%と、約29年ぶりの高さになりました。それでも応札は「低調」で、同じ流れの中で30年債利回りは一時4%台に乗せています[9]。
「国債が売られて金利が上昇」という定型文は、初めて見ると意味がつかみにくいものです。売られたのに、なぜ「上昇」なのか。長期金利には何が織り込まれているのか、日々の報道の数字だけでは、そこまでは分かりません。
以下、価格と利回りの関係から、長期金利の中身、イールドカーブの見方、そして日本市場特有の買い手の事情まで、国債という、世界で一番大きな借金の値段の仕組みを順に見ていきます。No.001(日銀の利上げ)の続きとして、そしてこの先の財政の号でも使う辞書です。
価格と利回りのシーソー
国債は国の借用書です。満期まで持てば、決まった利子(表面利率=クーポン)と元本が返ってきます。ポイントは、発行後も市場で売り買いされ、価格が日々動くことです[2]。
いま、表面利率2%の既発国債を持っているとします。市場金利が上がり、新しく発行される国債の利率が3%になったら、何が起きるか。誰も、2%の債券を額面どおりでは買ってくれません。新しい3%の債券のほうが得だからです。2%の債券は、3%の債券と見合う利回りになる水準まで価格が下がって、ようやく買い手がつきます[1]。
これが「金利上昇=債券価格の下落」の正体です。利回りとは、いまの価格で買って満期まで持った場合の実質的な収益率のことで、価格が下がるほど(安く買えるほど)利回りは上がります[2]。「国債が売られた(価格が下がった)」と「金利が上昇した」は、同じ現象を別の側から言っているにすぎません。
長期金利には、何が織り込まれているか
10年債の利回り2.7%という数字には、何が入っているのか。標準的な分解はこうです[3]。ひとつは10年間、短期金利(いまなら日銀の政策金利)がどう推移するかという市場の平均的な予想です。日銀が利上げを続けると見られれば、この部分が持ち上がります。もうひとつは、タームプレミアム(上乗せ)です。予想どおりに短期金利が推移しないリスクを10年間抱えることへの補償にあたります[3]。インフレの先行きが見通せないとき、そして国債の需給や財政の持続性に不安があるとき、この上乗せが要求されます。